パウロ外伝 冒険者編3話【迷宮踏破】


未だに名前は仮のままだが、パウロたちがパーティ『ロード・オブ・ジャッジメント』を結成して、丸5日が経過した――。

大鳥亭を拠点にいくつかの依頼をこなしているが、パウロには思うところがある。
報酬の分配をし終えてから、重々しく話を切り出した。

パウロ
「……これは由々しき問題だ。
お前らもそう思うだろ?」

ギース
「はいはい、そうだな。
おっ、この肉料理うめえな!」

タルハンド
「む……酒が足りんな。
店主! もう1杯おかわりだ!」

パウロ
「お前らぁ……!
ぜんぜん聞いてねえだろ!?」

パウロ
「俺はリーダーとして、パーティの今後に関わる大事な話をしてんだぞ!?
もう少し真面目に聞けよ!」

パウロが席を立って声を上げると、ギースとタルハンドは溜め息をついて顔を見合わせた。

ギース
「だってよぉ、ソレを問題視してんのはパウロだけだろ?
俺らはべつに……なあ?」

タルハンド
「ああ、いかにも。
だが反対する気もない。
その件に関しては好きにするといい」

ギース
「つーよりもよぉ、名前をどうにかしようぜ?
ロード・オブ・ジャッジメントのままって、どうなんだよ?」

ギース
「俺らがトースマンの仲間だって、もう何回間違われたことか……!」

タルハンド
「いくら解散したとはいえ、他のパーティの名をいつまでも借りてはおれまい」

パウロ
「それこそどうでもいい!
もっと他に大事なことがあるだろ!」

パウロはテーブルを叩いて立ち上がると、冷めた様子の仲間に向かって吠えた。

パウロ
「ギース、タルハンド!!
お前らはわかっちゃいねえな!
うちには大事なモンが欠けてんだぞ!」

パウロ
「うちにはな……華がないんだ!!」

誘った女剣士に振られ、男3人だけで組んだパーティがパウロは不満だった。
それはもう、非常に。

パウロ
「どうせ男女比が偏るなら、俺は圧倒的に女に偏ったパーティが良かった!」

パウロ
「依頼をこなしてる時も、終わって酒飲む時も、宿に泊まる時も、周りにいるのはムサい男だけ!」

パウロ
「わかるだろ!? これはなぁ!!
一刻も早く解決しなきゃいけねえ問題なんだぜ!?」

ギース
「つってもなぁ……。
腕の立つ女の冒険者は引く手あまただ。
とっくにどこかのパーティに所属してるだろ?」

タルハンド
「今さら新規のパーティに入りたがる者がいるとは思えん。
しかも名前がなぁ……」

ギース
「そうそう、名前が悪い。
前のも今のも、ロード・オブ・ジャッジメントは
評判よくねえからな」

パウロ
「じゃ、じゃあ……、ロード・オブ・ジャッジメントを知らない、冒険者になりたての新人を勧誘するとか!」

ギース
「それはいいけどよ……。
お前についてこれる新人がいるのか?」

タルハンド
「……例えば、あそこにいる娘はどうじゃ?」

タルハンドが目線で示す先には、見るからに新人といった風情の女冒険者がいる。

パウロ
「すげえかわいい。
おっぱいもでけえし最高だな!」

タルハンド
「女として抱く分にはいいだろう。
では、仲間として背中を預けられるか?」

パウロ
「!! それは……」

パウロ
「あの子は、ものすごくかわいい。
だけど……武器の手入れができてねえ。
あれじゃあ背中は預けられねえよな……」

タルハンド
「それが見えるほどの冷静さはあるとわかっているから、パウロの好きにしていいと言ったんじゃ」

パウロ
「……そう、かよ」

タルハンドの言いたいことはわかる。
パーティの力に見合った冒険者を性別を縛って探すのは難しいだろう。

ただでさえここにいるのは、パーティのメンバーを見つけるだけで苦労していたメンツだ。

パウロ
(俺たちの力とつり合う、女冒険者……)

ふとパウロの頭に、ひとりの女の顔が浮かぶ。

パウロ
「あいつは……?」

ギース
「あいつって?」

パウロ
「ほら、あの女冒険者!
トースマンのとこにいた、エリナリーゼってヤツ!」

タルハンド
「む……」

パウロ
「あの女、今どうしてんだろうな?」

パウロ
「遺跡で一緒に戦って、エリナリーゼの腕が立つのはわかってる。
それに俺たちとの相性も悪くなかった」

パウロ
「俺の好みとは違うけど、うちに合ってる気がする!
だからあいつのこと誘ってみないか?」

話せば話すほど名案に思えた。
パウロのタイプではないが、エリナリーゼなら間違いなく『華』と言えるだろう。

ギース
「まあ、お前がそう言うなら、声をかけてみてもいいかもしれねえな」

パウロ
「どこに行けば会えるんだ?」

ギース
「んー……派手な女だったし、酒場や食事処で聞いてみればわかるかもな」

タルハンド
「………………」

タルハンド
「エリナリーゼの居場所ならば予想がつく」

パウロ
「エッ?」

ギース
「なんで知ってるんだ?
俺よりも情報通じゃねーか!」

タルハンド
「……知人だ」

パウロ
「知り合い!?
そうなら先に言えよな!」

タルハンド
「う、うむ……」

パウロが迫ると、タルハンドは気まずげに酒を煽る。

タルハンド
「しかし、あやつを仲間にするのか……」

パウロ
「文句あんのかよ?
さんざん好きにしていいって言ったろ?」

タルハンド
「……あの女は、呪われている」

パウロ
「は? 呪いって……?」

タルハンド
「会って話せばわかる。
詳しいことは本人に聞くといい」

そう言うとタルハンドは席を立った。

パウロ
(エリナリーゼが呪われてるって、どういうことだ……?)

内心で首をかしげながらも、パウロはタルハンドのあとに続いた。

タルハンドが狭い歩幅で向かったのは、町にある冒険者御用達の宿だった。

タルハンド
「あいつが主に使っているのは、西の角部屋だ。
行くならひとりで行け」

ギース
「え? 俺らは?」

タルハンド
「待機じゃ」

ギース
「一緒に行くとマズいのか?」

タルハンド
「十中八九」

ギース
「よし、パウロ。行ってこい!」

タルハンドの雰囲気に危険を察知したのか、ギースはあっさりとパウロをひとりで行かせることに同意した。

パウロ
「よくわかんねえけど、わかった!
ちょっと説得してくるぜ!」

パウロは西の角部屋に向かい、ドアをノックする。

パウロ
(……返事がない?
いないのか?)

そっと耳を澄ませてみると、中からは微かに人のいる音が聞こえてきた。

パウロ
(いるんじゃねえか)

顔をしかめながら、2度、3度とノックを繰り返す。
居留守なんて使わせない。
出てくるまで何度でもドアを叩いていると――。


「うるせえんだよ!!」

パウロ
「!」

ドアが開いて男が殴りかかってきた。
パウロは攻撃をかわして、つい思わず反撃する。
拳が男の腹にめり込んだ。


「う、ぐっ……」

パウロ
「あ……お、おーい、起きてるかー?」

パウロ
「……ダメだな。気絶してやがる」

男を揺すってみるが起きる気配はない。
どうしたものかと頭をかいていると、人が近づいてくる気配がした。

エリナリーゼ
「パウロ……?
あなた、何をしているんですの?」

パウロ
「よぉ、エリナリーゼ。
今日はお前に話があってきたんだ」

エリナリーゼ
「……話も何も、どうして彼が気を失っているのかしら?
あなたがやりましたの?」

パウロ
「正当防衛だ」

エリナリーゼ
「なんでもかまいません。
では、さようなら」

パウロ
「!!」

エリナリーゼがドアを閉めようとするのを、パウロは隙間に足を挟んで止めた。

エリナリーゼ
「何をなさいますの!?」

パウロ
「だから! 話があるんだって言ってんだろ!?」

エリナリーゼ
「聞く気はありませんわ!
人のお楽しみを邪魔しておいて図々しい!」

パウロ
「は!? お楽しみって……お楽しみか!?
男と女のアレやソレ!?
弱くて冴えないこの男と!?」

足元で倒れている男を示し、パウロは驚愕の表情を浮かべる。

エリナリーゼ
「わたくしが誰とナニをしようが、あなたに関係ありませんことよ!」

パウロ
「いいや! 関係あるぜ!」

パウロ
「俺はお前を勧誘しに来たんだからな!」

エリナリーゼ
「……はい?」

パウロ
「エリナリーゼ・ドラゴンロード。
俺のパーティ、ロード・オブ・ジャッジメントに入らないか?」

エリナリーゼ
「ロード・オブ・ジャッジメント……。
メンバーが全員やめて解散したはずなのに、最近また名前を聞くようになったので不思議でしたの」

エリナリーゼ
「あなたたちが名乗っていましたのね。
それで、わたくしを仲間にと……」

エリナリーゼ
「あなた……本気で言ってますの?」

パウロ
「冗談で誘うかよ」

エリナリーゼは真っ直ぐな目でパウロを見据えてくる。

しばらくの間ふたりは見つめ合っていたが、不意にパウロの足を挟むドアの力が緩んだ。

エリナリーゼ
「……いいでしょう」

パウロ
「本当か!?」

エリナリーゼ
「ただし!」

エリナリーゼ
「あなたがわたくしを満足させることができたら、ですわ」

パウロ
「それって、つまり……」

エリナリーゼ
「あなたが気絶させてしまったせいで、わたくし、身体が火照っていますのよ……」

エリナリーゼ
「自信がないのなら、無理にとは言いませんわ」

妖艶に笑うエリナリーゼにパウロもニヤリと笑みを返す。
そしてドアを開けて中に踏み込むと、エリナリーゼの腰をグッと抱き寄せた。

パウロ
「満足させられるか?
そんなの自信しかねえよ」

エリナリーゼ
「あら、楽しみですわ」

ドアが閉まると同時に、エリナリーゼによる試験が始まった――。

翌日――。

タルハンド
「落ちつけ、ギース」

ギース
「これが落ちつけるかってんだよ!
ひと晩経ってもパウロが帰ってこねえなんて、何かあったに決まってんだろ!」

ギース
「俺は戦えねえんだ!
いざって時は頼むぜ、タルハンド!」

タルハンド
「うむ……心配はいらんと思うが……」

ギース
「い、いい行くぞ!」

朝いちばん、エリナリーゼの部屋に乗りこんだふたりが見たものは、ベッドの上ですっからかんに搾り取られたリーダー……パウロの姿だった。

ギース
「し、死んでるのか……?」

タルハンド
「早合点するでない。
まだ息はある」

エリナリーゼ
「ふふふ、楽しい一夜でしたわ。
ギース、タルハンド。
仲間として、これからよろしくお願いしますわね」

こうして4人となったロード・オブ・ジャッジメントは、少数精鋭の実力派として、順調に依頼をこなしていくことになった。

いくつかの依頼を達成し、メンバー同士の連携が上手くまわり始めた頃……、リーダーが唐突に言い出した。

パウロ
「迷宮に行こうぜ」

ギース
「は? 迷宮?」

タルハンド
「ふむ……」

エリナリーゼ
「お互いのこともわかってきましたし、頃合いとしては悪くありませんわね」

迷宮とは、大地が作り出す天然のダンジョンだ。
ただの洞窟や地下空洞に魔力が溜まることで変異し、迷宮へと変貌を遂げる。

最奥には魔力結晶と呼ばれる巨大な宝石が存在しており、その存在が魔物を呼び寄せた。
そして迷宮は内部で死んだ魔物や人間を吸収して大きくなるとされている。

パウロ
「そうだろ?
迷宮踏破は冒険者のロマンだしな!」

ギース
「つーけどよ、そう簡単に行くか?
迷宮っつったら聖剣を探しに行った遺跡より、厄介な場所じゃねえの?」

パウロ
「だからいいんだろ!」

パウロ
「本物の迷宮を攻略できたら、賞金はがっぽりだし、ランクだって上がるはずだ!
冒険者としてもう1段上に行ける!」

タルハンド
「なるほど。
ちまちま低いランクの依頼をこなすのは、性に合わんということか」

パウロ
「そういうことだ!
だから、迷宮行こうぜ!」

エリナリーゼ
「わかりましたわ。
でも迷宮の場所は把握していますの?」

パウロ
「それはギースが頑張る」

ギース
「おい!」

エリナリーゼ
「装備はもちろん、攻略の準備は念入りすぎるほどにしないといけませんわね」

パウロ
「それもギースが頑張る」

ギース
「俺の意見は聞かねえのかよ」

パウロ
「? なんだよ?
やってくんねえのか?
それとも迷宮踏破に興味ねえとか?」

ギース
「そんなわけねえだろ!
俺が全部やってやるから、お前らは大船に乗ったつもりで待ってろ!」

リーダーのパウロの唐突な提案から1週間後、ロード・オブ・ジャッジメントは迷宮踏破を目指して町を出た。

聖剣の遺跡の時のように時間に追われてはいない。
連携や戦術を確認しつつ、1週間ほどかけて慎重に迷宮を目指していた。

ギース
「今日はこの辺で野営だ。
暗くなる前に支度を終わらせるぞ」

パウロ
「なぁ、ギース。
ここから迷宮まであとどのくらいだ?」

ギース
「急げば3日、このペースなら5日ってとこか」

パウロ
「おお……まだけっこうかかるんだな」

エリナリーゼ
「じゃあ、次の村か町まで、あとどのくらいかかるのかしら?」

ギース
「こっから1日ってとこに小さな町がある。
明日はそこで宿を取るつもりだぜ」

エリナリーゼ
「あと1日……そのくらいなら、まあ、いいでしょう」

タルハンド
「……男漁りか」

パウロ
「いいじゃねえか。
俺も迷宮に挑む前に英気を養わねえとな!」

ギース
「なんでもいいけど、トラブルは起こすんじゃねえぞ……」

ギースは呆れたような顔をしながらも、料理の支度に取りかかる。

日が沈んだ頃、パウロたちは焚き火を囲んで、ギースが作った夜食に舌鼓を打っていた。

パウロ
「ん?」

ギース
「なんだ? 美味すぎて驚いたか?」

パウロ
「……今さらンなことで驚くかよ」

パウロは皿を置いて剣に持ち換えると、ギースたちの前に出る。

エリナリーゼやタルハンドも態勢を整える中、ギースだけがわけもわかっていなかった。

パウロ
(微かに、気配がする……)

空気が張りつめる中、正面の茂みが揺れて――。

???
「ぅ……」

パウロ
「!! 獣族……?」

???
「……う、ぐ……」

パウロ
「おい! 大丈夫か!?」

パーティの前に現れたのは獣族の女だった。
彼女はふらつきながら近づいてくると、パウロたちの前で崩れ落ちる。

ギース
「な、なんだなんだ!?
どうしたんだ!?」

エリナリーゼ
「怪我をしていますの?」

タルハンド
「その前に周囲の警戒をせねば。
彼女が何かに襲われたのならば、まだ近くに襲撃者がいるやもしれん」

ギース
「襲撃者!? 獣か賊か魔物か!?」

パウロ
「……ん?」

パーティのメンバーが騒ぐ中、パウロは獣族の女を腕に抱き、違和感に首を傾げた。

パウロ
「なあ、こいつさ、怪我してるようには見えねえんだけど」

エリナリーゼ
「え? ちょっと見せてください」

エリナリーゼ
「……あら、本当ですわ」

ギース
「じゃあなんで倒れたんだよ?」

パウロ
「知るか。本人に聞いてみねえと……おーい。
お前、意識はあんのか?
聞こえてんのか? おーい」

???
「……ぅ、っ……、った……」

パウロ
「は? なんだって?」

???
「……はら、……へっ、た……」

パウロ
「つまり……行き倒れ?」

パウロの問いに答える者はなく、焚き火の爆ぜる音だけが静かな森に落ちた。

1時間後――。

???
「ふぅ……満腹だ」

???
「肉もスープも美味かった」

パウロ
「そりゃけっこうだけどよ、そろそろ名前くらい教えてくれてもいいんじゃねえか?
無我夢中で食ってて、ロクに喋んねえんだもんな」

???
「ああ、まだ名乗っていなかったか。
あたしはギレーヌ。
一応、冒険者をしている」

ギース
「ギレーヌ?
もしかして……黒狼、か?」

ギレーヌの名前を聞いてギースが反応した。

パウロ
「知ってんのか?」

ギース
「名前だけだけどな。
かなり腕が立つって話だぜ」

パウロ
「ふーん、ギレーヌか……見たとこ、剣士だな。
でもなんで一応なんだ? 冒険者登録してんだろ?」

ギレーヌ
「あたしは世の中を知るために旅をしてる。
師匠に、旅をするなら冒険者になったほうがいいと言われてなっただけだ」

パウロ
「なるほど。
肩書きだけだから一応ってつくわけか」

パウロ
「どおりで腹減って行き倒れるわけだぜ。
いっぱしの冒険者なら、そんなヘタは打たねえだろうしな」

パウロが笑うと、ギレーヌは気まずげに目をそらした。

ギレーヌ
「食べ物が買えなかったんだ。
……金がなくて」

ギース
「それこそ冒険者の肩書きを使うとこだろ?
依頼を請けて報酬をもらえば、メシ食うくらいの金になるぜ?」

ギレーヌ
「依頼は請けた。
パーティに入れてもらって魔物を討伐して、報酬ももらった」

エリナリーゼ
「魔物と戦闘になるような依頼でしたら、それなりの報酬になるはずですわ。
そのお金はどうしましたの?」

ギレーヌ
「1回の食事でなくなった」

タルハンド
「宵越しの金は持たん主義か?」

ギレーヌ
「ヨイゴシ? なんだそれは?
大銅貨とどっちが高い?」

真面目な顔をして聞いてくるギレーヌに、パウロたちは揃って同じ疑惑を覚えた。

エリナリーゼ
「ギレーヌ、あなた、何ランクの依頼を請けて、いくらほど、わけ前をもらいましたの?」

ギレーヌ
「確か――」

ギレーヌの返答を聞いて、パーティの全員が抱いた予感は確信へ変わる。

パウロ
「ギレーヌ、騙されてんぞ」

ギレーヌ
「何?」

ギース
「その条件だったら、報酬は10倍あってもいいくらいだぜ」

ギレーヌ
「!?」

ギース
「戦闘に参加しなかったとか、役に立たなかったって言うなら話は別だが、お前はそうじゃねえんだろ?」

ギレーヌ
「1番多く切った」

パウロ
「じゃあやっぱり騙されてんだよ」

パウロ
「それに気づきもしねえなんて、お前、よっぽどのお人好しか、バカだろ」

ギレーヌ
「!!」

衝撃の事実と言わんばかりに、ギレーヌが固まる。

タルハンド
「騙されるのが初めてではなさそうだ」

エリナリーゼ
「旅をしているなら後腐れありませんものね。
騙されて、追い出されて……。
その繰り返しだったのでしょう……」

ギレーヌ
「やめろ! そんな目で見るな!」

生温かい視線に居心地が悪くなったのか、ギレーヌが立ち上がった。

ギレーヌ
「……世話になった。あたしはこれで――」

パウロ
「なんだ、もう行くのか?
一文なしなら泊まるとこもねえんだろ?
ここにいればいいじゃねえか」

ギレーヌ
「これ以上の借りを作る気はない」

エリナリーゼ
「急いでいるようね。
どこか行きたい場所でもあるのかしら?」

ギレーヌ
「迷宮だ」

ギレーヌの言葉にパウロは目を丸くする。

パウロ
「迷宮って、この先の密林地帯にある迷宮か?」

ギレーヌ
「ああ」

ギース
「行き倒れるくらいだし、パーティも組んでないんだろ?
迷宮にひとりで入ろうなんて、命を捨てに行くようなもんだぜ?」

ギレーヌ
「侮るな。そんなに弱くない」

エリナリーゼ
「この無謀で無鉄砲な感じ、パウロによく似ているんじゃなくて?」

ギース
「ハハッ、そうだな!
どおりでパーティを組めねえはずだ」

パウロ
「うるせえ!
俺のことはほっとけ!」

ギースとエリナリーゼに吠えてから、パウロはギレーヌに向き直った。

パウロ
「それより、ギレーヌ。
お前はやっぱりここに残ったほうがいい」

ギレーヌ
「なんだと?」

パウロ
「俺らも密林の迷宮を目指してるんだ」

パウロ
「だから一緒に行かねえか?
冒険者同士、パーティでも組んでさ!」

パウロは何人もの剣士を見てきた。
その中でもギレーヌが突出した実力者であることは、ひと目見た瞬間に察知していた。

パウロ
(腕の立つ剣士が増えれば、連携の幅が広がるし、うちはもっと強くなるだろう)

戦術的な面を考えるリーダーとして、ただ単純にギレーヌに反応する男として、パウロは彼女を勧誘する。

ギレーヌ
「お前たちには世話になった。
だが、それとこれとは話がべつだ」

ギレーヌ
「パーティには入らない。
ひとりでも迷宮は攻略できる」

パウロ
「そんなに甘くねえと思うけど?」

ギレーヌ
「……世話になった」

ギレーヌはそれだけ言うと、1度も振り向くことなく立ち去ってしまった。

エリナリーゼ
「行ってしまいましたわね……」

タルハンド
「追うか?」

パウロ
「今何を言っても、本人に聞く気がなさそうだからな。
それにあんまり夜動きまわるのは得策じゃねえ」

パウロ
「何はともあれ、明日も早い。
さっさと休もうぜ」

――密林地帯に迷宮と化した遺跡がある。

ギースが手に入れた情報を元に町を出発した冒険者パーティ、ロード・オブ・ジャッジメントは、その日、迷宮の入口に到着した。

中に足を踏み入れてすぐ、パウロたちは異変に気づいた。

パウロ
「魔物の死骸だ」

タルハンド
「ふむ、あちこちに散らばっているな。
見事な切り口だ」

エリナリーゼ
「これはギレーヌがやったのかしら?」

パウロ
「他にいねえだろ。
にしても……あいつ、かなり強いな」

魔物はひと太刀で切り捨てられていて、パウロは剣士として感心してしまう。

パウロ
「……迷宮攻略はひとりでできるって、大きなことを言うだけの実力はありそうだ」

タルハンド
「まさかギレーヌは、向かってくる魔物を全て相手にしたのか?」

ギース
「かもしんねえな。
先までずっと死骸が続いてる……。
底知らずの体力か?」

パウロ
「底知らずったって、限界のないヤツはいねえよ」

パウロ
「初めての迷宮だ。
慎重に進んだほうがいいんだろうけど、……先を急ぐぞ」

エリナリーゼ
「ギレーヌのため、ですの?」

パウロ
「放っておけないだろ。
あんないいケツした美人」

ギース
「お、お前ってやつは……結局そこか!!
まさかパーティに誘った理由も、そういうことじゃねえだろうな!?」

パウロ
「悪いか? 大事なことだろ?」

エリナリーゼ
「節操のない人ですこと」

パウロ
「お前だけには言われたくねえな」

初めての迷宮に挑んでいるとは思えないほど、パウロたちはいつものままだった。
気負いはない。

パウロがしばし口をつぐみ、全員の顔をぐるりと見わたす。

パウロ
「……よし、行くか」

ギレーヌが先行していることもあり、パウロたちを襲撃する魔物もほとんどいなかった。

パウロ
(ま、さすがにゼロではないけどな!)

目の前に迫ってきた複眼の魔物を切る。
同時にパウロの左右を魔法が飛んでいき、正面に陣取る魔物の群れを攻撃した。

ギース
「はぁ、おっかねえ……」

タルハンド
「こんなものか」

エリナリーゼ
「数も多くありませんし、最奥までは時間をかけずに行けそうですわね」

ギース
「罠も発動済みのばっかしだ。
こりゃあれだな。
前に行ったヤツがほとんど引っかかってんだ」

パウロ
(ギレーヌか)

パウロ
「……こりゃなんつーか、ますます急いだほうが良さそうだな」

パウロが攻撃特化で戦い、エリナリーゼは堅実な前衛を務める。
タルハンドは後方から魔法で攻撃。

パウロたちの戦術はシンプルだ。
だが、個人プレーが得意な実力者が揃うパーティにとって、単純な役割分担が、大きな効果を生んでいた。

ギースが罠に注意しつつ、パウロたちは迷宮を進み続け、驚くほどの速さで最奥の前まで辿りついた。

パウロ
「………………」

ギース
「なんだよ、急に黙り込んで。
ビビッてんのか?」

パウロ
「なわけねえだろ。
ただ、こっから先は今までみたいに簡単にはいかねえ」

パウロ
「魔力結晶を守ってるガーディアンがいる。
もしかしたら聖剣の遺跡の時よりも、厄介な魔物かもしれねえ……」

タルハンド
「様子を見るか?
それともすぐに戦闘に入るか?」

パウロ
「ギレーヌ次第だ……エリナリーゼ」

エリナリーゼ
「ええ、わかっていますわ。
ギレーヌの状況次第では救出する必要があります。
わたくし達に治療できる程度の負傷ならいいのですけど」

ギース
「なんにしろ、お前らは魔物に集中しろ。
罠なんかの仕掛けがないか、俺が確認しとく」

パウロ
「おう。みんな言うまでもなかったな。
それじゃあ……行くか!」

パウロたちが迷宮の最奥に足を踏み入れると、そこは広い空間が広がっていた。

密林の中にあるからか、壁や天井の裂け目からツタが伸び、苔が生えている。

少し湿ったその空間で、ギレーヌが巨大な蛇の魔物と交戦していた。

ギース
「あ、あれは……レッドフードコブラ!?」

パウロ
「知ってんのか?」

ギース
「魔大陸に生息する、危険度Aランクの魔物だ……」

レッドフードコブラは巨体で、その全身を火の耐性を持つ硬い鱗でおおわれている。
また俊敏性が非常に高く、ギレーヌの攻撃をかわしていた。

ギース
「火の魔法は使っても意味がねえ。
それから、牙には気をつけろ」

パウロ
「蛇の牙……毒か。
とりあえず、今はそれだけわかれば充分だ」

パウロはメンバーの顔を順に見てから、剣を構える。
そして軽く地面を蹴って、魔物に飛びかかった。

剣を一閃。
パウロの刃がレッドフードコブラに届く。

パウロ
「!?」

剣が鱗に弾かれた。
パウロは柄を握る手に力を込める。
そうしなければ反動で剣を落としてしまいそうだ。

パウロ
「かってェな!」

ギレーヌ
「! おい、なんのつもりだ?
こいつはあたしの得物だぞ!」

パウロ
「苦戦してたクセに無理すんなよ!」

ギレーヌ
「そ、そんなことはない!」

それが虚勢だということは、誰の目にも明らかだった。

パウロ
(ひとりで突破して、ここまで来たんだ。
疲弊してないはずがねえ)

レッドフードコブラはただでさえ俊敏で、疲弊して鈍ったギレーヌの剣では明らかに苦戦している。

タルハンド
「岩砲弾(ストーンキャノン)!」

タルハンドの後方からの攻撃を、魔物は巨体を器用に動かしてかわした。

レッドフードコブラは標的をタルハンドに変えて襲いかかってくるが、そこを狙うようにエリナリーゼがエストックを振るう。

ギレーヌ
「おい! 邪魔をするな!」

パウロ
「文句言ってる場合か?」

ギレーヌ
「あたしの獲物だ!」

ギレーヌはパウロたちに吠えると、レッドフードコブラに向かっていった。

彼女の太刀筋は、見る者が見ればわかるほど洗練されている。

パウロ
(剣神流……それもかなり強い)

パウロ
(俺がこれまでに見た、
どの剣神流の使い手よりも巧みだ)

自分よりも強いと思える剣士に出会うのは、ギレーヌがふたり目だった。

ひとりは言うまでもなく水神レイダだ。
彼女とは肩を並べて戦うなんてことはなく、一方的にやられただけだった。

パウロ
(俺より強い剣士と組んで戦う。
しかも相手は強力な魔物……)

パウロ
「……面白え!」

知らず知らずのうちにパウロは笑っていた。

レッドフードコブラがパウロにつっ込んでくる。
後ろに飛んでかわせば、毒を帯びた牙が地面に刺さって表面を溶かした。

パウロ
「はぁあああっ!」

パウロ
(鱗は硬くても目は柔らかいはずだ!)

狙って剣を振るうが届かない。
魔物がかわした先にはギレーヌがいた。

パウロ
(動きを読んでたのか!?)

ギレーヌは剣を一閃するが、レッドフードコブラが頭を振って剣先をずらす。

ギレーヌ
「く……!」

パウロ
「ギレーヌ! いつもより深く踏み込め!」

ギレーヌ
「あたしに命令するな!」

パウロ
「いいから聞け!」

パウロ
「普段のお前の状態なら、今の一撃で目を抉ることができただろう。
でも、疲弊した状態じゃ微妙にずれちまう!」

ギレーヌ
「!」

パウロ
「俺たちがもう1度、お前のほうにソイツをつっ込ませる!
今度は深く踏み込んで、首を落とせ!」

ギレーヌ
「な、なんなんだ!?」

ギレーヌ
「どうしてあたしにそんなことを言う!?」

パウロ
「俺は迷宮を踏破したい!
コイツを倒すのに、お前の力がいるんだ!」

同じ流派を学んだ剣士だからこそ、相手の実力が手に取るようにわかる。

パウロ
「だから、力を貸してくれ!」

ギレーヌ
「っ……」

ギレーヌは逡巡するようにパウロを見つめた。
実力者である分、これまでの彼女は誰かを頼ったり、協力しようという考えはなかっただろう。

パウロ
(俺もそうだったから、わかる)

ギレーヌ
「……今回、だけだ」

ギレーヌ
「それと、難しいことはわからないぞ」

ギレーヌの返事にパウロはニヤリと笑った。

パウロ
「なーに、さっきも言ったろ?
頼みはひとつだけ……ヤツの首を落とせ!」

ギレーヌ
「ああ、わかった」

技の質はもちろん、ギレーヌの性格も前衛向きのものだ。
パーティの動きが変わった。

これまで攻撃的な前衛として動きまわっていたパウロは、前衛と後衛を繋ぐポジションを位置取り、幅広いシチュエーションに絡んでいく。

エリナリーゼ
「タルハンド! 今ですわ!」

タルハンド
「わかっておる!」

パウロが下がったことで、エリナリーゼは後衛の護衛に集中し、周囲をより広く見ることができるようになった。

タルハンドも安定して魔法の攻撃を放っている。
ギレーヌが入ったことによって、全てがいい方向に進んでいた。

パウロ
「オラァ! ギレーヌ!
行ったぞ!!」

ギレーヌ
「おおおぉぉ!」

ギレーヌが深く踏み込み、剣を一閃。
硬い鱗におおわれたレッドフードコブラの首が落ちた。

ギレーヌ
「や、った……!」

パウロ
「……ああ! やったんだ!!」

パウロ
「やった! やったぞ!
ガーディアンを倒したんだ……!!」

ギース
「って、ことは……」

パウロ
「迷宮踏破だ!!」

パーティメンバーが歓喜の声を上げる。
エリナリーゼ、ギース、タルハンドが互いに抱き合い、パウロも傍にいたギレーヌを衝動的に抱きしめた。

ギレーヌ
「お、おい!」

パウロ
「ハハッ! 迷宮踏破だぜ!
並の冒険者じゃできねえことだ!」

パウロ
「それを俺たちがやり遂げたんだ!
嬉しくないはずがねえだろ!」

ギレーヌ
「………………」

ギレーヌはパウロの言葉に何も返さず、口をつぐんでいたが……。

ギレーヌ
「!!」

ギレーヌ
「やめろ!」

パウロ
「ぐはっ」

パウロの腕が捻りあげられ、ほとんど同時に顎を拳で殴られる。
流れるような動きで、パウロは地に倒れる。

ギレーヌ
「どういうつもりだ?」

パウロ
「……魔が差しました」

地面に横たわりながらも、鍛えられて引きしまった臀部の感触を思い出すかのように、パウロは手を握る。

ギース
「何やってんだよ、お前は……」

メンバーの呆れきった視線がつき刺さった。

エリナリーゼ
「さっさと魔力結晶とお宝を回収しますわよ」

タルハンド
「うむ。ざっと見ただけでも、5人で等分しても充分な額になる量だ」

ギレーヌ
「あたしも同じだけもらえるのか?」

ギース
「ああ、もちろん。
うちはきっちり等分だって決まってる。
リーダーの決定だ」

エリナリーゼ
「それに、1番の功労者はギレーヌですわ」

ギレーヌ
「正式なメンバーではない。
それでもか?」

タルハンド
「是と言うまでもない」

ギレーヌ
「……変なヤツらだな」

ギレーヌ
「こんなによくしてもらうのは、初めてだ」

ギレーヌ
「………………」

ギレーヌは何か言いたそうな目をしていたが、結局、口にすることはなかった。

パウロ
(素直じゃねえ女)

パウロ
「なあ、ギレーヌ」

パウロは起き上がると、仲間たちを背に、ギレーヌと向き合う。

パウロ
「お前さ、正式なメンバーじゃないとか言うなよ。
俺たちはもう仲間だろ?」

ギレーヌ
「! え……」

パウロ
「うちにはギレーヌが必要だ。
お前がいてくれたら、俺たちはもっと強くなれる!」

パウロ
「だから、そうだな、お前が入ってくれるなら、パーティの名前を変えてもいい」

ギレーヌ
「な……!?」

パウロ
「お前は黒狼って呼ばれてんだろ?
それにあやかって……パーティの名前は、『黒狼の牙』にする」

黒狼の牙――。
パーティの誰しもがその名前を受け入れて、反対の声を上げる者はいなかった。

ギース
「いいじゃねえか、黒狼の牙!」

エリナリーゼ
「ええ、ロード・オブ・ジャッジメントとは比べものにならないくらい、いい名前ですわね」

タルハンド
「だがしかし、牙はどこからきたんじゃ?」

パウロ
「そりゃもちろん、俺らが組んで初めて戦った、レッドフードコブラにあやかっての、牙だ」

タルハンド
「なるほどのう」

誰もが受け入れている。
そのあたたかい空気にギレーヌは戸惑っていた。

ギレーヌ
「ぁ……なんで、そんな風に言ってくれるんだ?」

パウロ
「そんなの決まってんだろ」

パウロ
「俺はお前と一緒にやっていきたい。
心底そう思ってるからだ」

パウロ
「だからギレーヌ、お前も同じ気持ちなら、今度こそ頷いてくれ」

パウロは真剣な顔でギレーヌを口説く。
剣を握るほうの、大事な手を差し出しながら、この手を取ってくれという想いを込め、見つめた。

剣士が利き手を差し出す。
彼女ほどの実力者が、そこに込められた信頼をわからないはずがなかった。

ギレーヌ
「……ああ。
あたしをお前たちの仲間にしてくれ」

手が重なる。
ギレーヌは柔らかい表情を浮かべた。
パウロは彼女の手を引いて、そっと抱き寄せる。

パウロ
「言っただろ。
俺たちはもう仲間だって」

ギレーヌ
「パウロ……」

ギレーヌ
「…………この手はなんのつもりだ?」

パウロ
「……そこにいいケツがあったら、とりあえず揉むだろ」

ギレーヌ
「そうか、歯を食いしばれ」

甘んじて拳を受けよう。
パウロの身体が宙を舞った。

ギース
「ほんと、こりねえなぁ……」

エリナリーゼ
「自業自得ですわ」

タルハンド
「これからも調子は変わらんじゃろう。
英雄好色とでもいうのだろうな」

どこか締まらない雰囲気だが、何はともあれ……。

その日、ロード・オブ・ジャッジメントは解散し、新たに生まれたパーティ、黒狼の牙は、初めての迷宮踏破を果たしたのである――。

もともと個々の実力が秀でていたパーティだが、ギレーヌが仲間に入ったこともあり、黒狼の牙は恐るべき速さでランクを上げていった。

冒険者ランクAの座に上りつめた頃には、黒狼の牙は冒険者であるなしを問わず、その名を広く知られるようになっていた。

パウロ
「酒だ! もっと持ってきてくれ!」

エリナリーゼ
「ふふふ、あの給仕の男の子、かわいい顔をしていると思いませんこと?」

ギース
「思いませんこと? って聞かれてもな。
男に興味ねえもんで」

ギレーヌ
「!! この肉、うまいな」

タルハンド
「うむ、酒に合う味だ。
こっちにも酒のおかわりを頼む!」

有名になった黒狼の牙が酒場で飲み始めると、周囲のテーブルにいた客の視線がチラチラ投げかけられる。

しかしパウロたちは気にした様子もなく、ワイワイと酒盛りを楽しんでいた。

パウロ
(Aランク……ここまできた)

パウロ
(好きなだけ剣を振り回して、好きなだけ女を抱いて、好きなだけ酒を飲む……)

パウロ
(毎日が楽しい。やっぱり冒険者ってのは、何よりも自由な生き物なんだ)

パウロは仲間たちの顔を見わたす。
これからもこのメンツで冒険を続けるのだと思うと、パウロの胸は弾んだ。

ギース
「なあ、パウロ。
次はどんな依頼を請けるか決まってんのか?」

パウロ
「ん? いーや、ぜんぜん。
面白そうなのがあればそれを受ける」

パウロ
「なんにしても、このまま世界を全部回って、好き放題に遊びつくしてやろうぜ!」

エリナリーゼ
「遊びつくすって……。
まるで子供みたいなことを言いますのね」

タルハンド
「出会った時と変わったのは、外見だけのようじゃな」

ギレーヌ
「中身は変わらない」

ギース
「変わらなさすぎだろ。
ぜんぜん成長してねえぞ、こいつ」

パウロ
「こ、こいつら……!
人のこと好き勝手言いやがって……!」

パウロが語った展望はいつの間にかスルーされていた。
しかし、誰も口にはしなかったが、このパーティならそれが叶うはずだと全員が確信している。

パウロ、18歳。
12歳で家を飛び出した少年は、立派な青年へと成長していた――。



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