パウロ外伝 修行編4話【破門】


水神レイダ――。

剣術を極めんとする者で、その偉大な名前を知らない者はいない。
水神流の剣士であればなおさら。

パウロ
(おお……)

パウロ
(寝坊した時はどうなるかと思ったけど、ちょうどいいタイミングだったな)

女の家から道場へ直接来てみると、誰もが待ちに待っていたその人は、すでに到着しているようだった。

パウロ
(すごい人数だ……。
道場の人間以外も集まってるのか)

パウロ
(あれ? 道場の天井が壊れてる?
何かあったのか?)

パウロは人が密集している場所を避けて、少し離れたところから道場の様子を窺うことにした。

パウロ
(オーガスタと向かい合ってる……。
あの人が水神レイダなのか?)

パウロ
(オーガスタと同期って言ってたから、……五十代!? それであんなに美人なのか!?)

あまりの衝撃にパウロはあんぐりと口を開ける。
主流の流派のひとつ、水神流の頂点に君臨する女にパウロは見惚れてしまった。

オーガスタ
「あー……つかぬことを聞くが、天井を破って登場する意味はあったかい?」

レイダ
「意味はないさ。
ただ、かっこいいと思わないかい?
いざって時に上から登場するってのは」

オーガスタ
「はぁ……おまえさんもいい歳なんだ。
少しは落ちつけないもんかね……」

レイダ
「あたしのことをどうこう言えるくらい落ちついたってのかい?
昔のあんたはどこにいっちまったのか……」

レイダ
「まぁ、いいさ。
かたっ苦しい話はここまでにしておこうかね」

昔馴染み同士の気軽な会話が交わされていたが、不意に道場の中に流れる空気が変わる。

レイダ
「剣士同士が顔を合わせたんだ。
やることはひとつしかないだろう?」

オーガスタ
「水神の相手をしろと?
おまえさんの強さは同期のおれが一番わかってる。
何せ水神の襲名を間近で見ていたんだから」

レイダ
「ごたくはいい。
さっさと剣を構えな。
久しぶりに揉んでやろう」

オーガスタ
「ハハッ、そうかそうか。
……お手柔らかに頼むぞ」

鍛錬用の剣ではない。
オーガスタは鈍く輝く武骨な剣を、レイダは黄金色の剣をそれぞれ構えた。

そして、火花が散る。
剣同士がぶつかる音が遅れて響いた。

その場には多くの人間が集まっていたが、全てのやり取りを目で追えた者がはたして何人いただろう。

レイダ
「おもしろいね。
今の攻撃も受け止めたのかい」

オーガスタ
「ハハッ、そりゃどうも!
水神様に褒められたなんて光栄だ!
ますます道場の名が売れてしまう、なッ!」

レイダ
「相変わらずおしゃべりな野郎だ。
あたしとやり合ってる時にここまで饒舌なのはあんたくらいなもんだよ」

オーガスタ
「おしゃべりは褒め言葉だ。
おれはこの口数の多さでフルートを口説き落としたんだからな!」

レイダ
「剣士がきいて呆れるね。
そこは剣の腕で口説かないかい。
なかなか悪くないもんを持ってるんだから」

オーガスタ
「悪くないもん、か……。
手心を加えられながら言われても、なッ!」

レイダ
「加えてないと、あんたはとっくに真っ二つさ」

ふたりの手合わせに群衆は歓声を上げている中、パウロは言葉を失う。

水神流の実力者同士の斬り合いに、パウロはただただ見入ってしまっていた。

パウロ
(オーガスタが水神に食らいついてる。
あいつと俺の戦績は五分五分……)

パウロ
(じゃあ、俺が水神とやり合ったとして、これだけのことができるのか?)

心臓がバクバクと早鐘を打つ。
知らずに握っていた手が震えている。

パウロ
(水神レイダ……)

パウロ
(剣筋が黄金色の閃光に見える……。
無駄のない動きって、こういうことを言うのか……)

パウロ
(これが水神流を極めた者の動き……。
しかも本気じゃないって言うんだから、驚異的だな)

レイダを見つめていたパウロの目に、彼女がハッと笑うのが映った。
そして、またたきの間。

パウロ
「え?」

レイダの身体がブレて、オーガスタの武骨な剣が弾き飛んだ。

パウロ
「今の、なんだ……?」

パウロの呟きを拾う者はいない。
それどころか、レイダの動きが変わったことに気づいた人間もどれほどいたことか……。

オーガスタ
「……はぁ、降参だ。
やっぱりレイダには敵わないな」

レイダ
「ハッ、最初からわかってたことだろう?
それなのにあたしの首を狙ってくるとはね」

オーガスタ
「おれが本気で水神様を……、おまえさんを倒そうとしていたと?」

レイダ
「違うのかい?」

オーガスタ
「これでもおれは、気のいい穏健派の師範で通っているんだがな。
古いつき合いの奴はこれだから……」

レイダ
「強い相手の首を獲りたいと思うのは、剣士の性ってもんさ。
あんたは師範の前にいっぱしの剣士ってことさね」

レイダ
「……よし、決めたよ。
あたしの首を獲る手助けをしてやろう」

オーガスタ
「手助けだって?
またわけのわからないことを……」

レイダ
「水神様であるあたしが鍛えてやろうかね。
しばらく邪魔させてもらうよ」

水神流の道場にとって水神の逗留は光栄なことだ。
オーガスタが一も二もなく承諾すると、レイダは愉快そうに笑った。

その日の夜――。
食卓は異様な雰囲気に包まれていた。

パウロ
(俺は空気、空気だ)

パウロはパンにかぶりつく。

レイダ
「あんたは独り身を貫いて、剣の道を生きていくと思っていたよ。
おれは女に興味ないって顔してたからね」

レイダ
「それなのにいつの間にか結婚して、可愛い娘までいるんだから驚きさね」

オーガスタ
「ハハッ、昔の話を持ち出すな。
まぁ、リーリャが可愛いってのはそのとおりだけどな。
歳とってできた子だから余計にそうさ」

レイダ
「開き直った親バカだね。
リーリャも剣術を?」

リーリャ
「は、はい!
ちちち父の元で学んでいます!」

レイダ
「そんなに緊張しなくてもいい。
あんたの親父とは子供の頃からの仲だからね。
そうだ。明日は剣を見てやろう」

リーリャ
「本当ですか!?
水神様にご指導いただけるなんて光栄です!!」

オーガスタ
「ハハッ、良かったな、リーリャ。
おまえさん、明日の朝稽古は気合いを入れないとな」

レイダ
「あんたの娘さ。きっと筋がいい」

明るい声で、和やかに会話をする3人を横目に、パウロはふたつ目のパンにかぶりつく。

フルート
「………………」

パウロ
(お、おお……すごい温度差だ……)

パウロ
(……ま、わからなくもないけどな)

剣に生きる夫と娘。
剣など振ったこともないフルートにとって、それは理解できない、簡単には触れられないものだろう。

そこによその女が入った。
しかも夫とは旧知の仲で、娘も女を慕っている。

パウロ
(いくらレイダが水神だって言っても、フルートには関係ないんだろう)

パウロ
(だってフルートは旦那が剣術師範ってだけで、剣を知ってるわけじゃない)

パウロ
(フルートはレイダを女としてしか見れないんだ)

フルート
「………………」

疎外されていると感じているのだろう。
不快感を覚えているが表に出すのは失礼なので我慢し、結果的に表情が硬くなっている……という感じだ。

パウロ
(その気持ちはわからなくもないんだよな)

だがあえて間に入るようなことはしない。
パウロは3つ目のパンにかぶりつくのだった。

翌日、道場は朝から満杯になっていた。
それを横目にパウロは町に繰り出す。

女A
「ふふふ、まさかこんなに若い子に声をかけられるとは思っていなかったわ。
あなたにしてみたら、私なんておばさんでしょう?」

パウロ
「そんなことないよ。
歳なんて関係なく、綺麗な人がいたから声をかけずにいられなかったんだ」

女A
「可愛いこと言うのね。
じゃあ今日はたくさんイイコトしてあげる。
若い子ができないようなコトを、ね……」

道場には水神レイダ目当ての剣士が溢れ、住み込みをしている家にはギスギスした空気が流れている。

パウロ自身も水神には興味があったが、面倒を避けたくて自然と足は離れていく。
その日、パウロは一週間ぶりに道場に足を運んだ。

パウロ
「ん……?」

道場の門をくぐってすぐ違和感に気づく。

パウロ
(初日よりも人が少ないような……?
まさかもう群衆は水神様に飽きたのか?)

首を傾げながら中に入ると、顔に憤怒の色を浮かべたリーリャが近づいて来た。

リーリャ
「パウロ! 今までどこに行ってたの!?」

パウロ
「どこって言われてもな。
よくしてくれる女の人の家を転々としてたから、はっきりとは答えられない」

リーリャ
「あんたがいない間、大変だったのよ!」

パウロ
「どういう意味だ?
水神様目当ての客をさばくのが大変だったのか?
それなら俺がいてもいなくても一緒だと思うけど」

リーリャ
「そうじゃないわ!
水神様じゃなくてあんたの客が来てたのよ!」

パウロ
「俺の客?」

パウロ
(もしかして……)

パウロの頭の中に、この町で別れた面子の顔がよぎる。
先日、彼らが町を出たと風の噂で聞いた。

パウロ
(まさか戻って来たのか?)

パウロが反応できずにいると、リーリャがきつく睨みつけてくる。

リーリャ
「あんたを訪ねて毎日ゴロツキが来てるの。
お礼参りなんですって」

リーリャ
「あんた、この町に来てからずいぶんと派手に暴れてたみたいじゃない。
町のゴロツキをボコボコにしてたんでしょう?」

心当たりはある。
強奪という形で日銭を稼ぎ、旅の資金にしていた頃の話だ。

パウロ
「なるほどな。
俺がこの道場にいるって知って、お礼参りに来たってことか」

リーリャ
「なるほど、じゃないわよ!
水神様がいる時にゴロツキが道場破りに来るなんて、恥さらしもいいところだわ!」

パウロ
「そう怒鳴るなよ。
実害は出てないんだろう?
だったら別にいいじゃん」

パウロ
「道場にはお前の父親も、それこそ水神様だっているんだ。
ふたりに任せておけば平気だって」

リーリャ
「開き直らないで!
あんたの不始末なのよ!?」

リーリャ
「もう我慢できないわ!
うちから出て行って!」

パウロ
「出て行けって言われてもな。
俺を引き留めてるのはお前の父親だぞ」

怒り心頭なようでリーリャの顔は真っ赤だ。
彼女は手に持つ剣をパウロにつきつけた。

リーリャ
「だったら、私が追い出すわ」

パウロ
「リーリャが力ずくで?
言いたくないけど、無理じゃないか?」

リーリャ
「バカにしないで!」

リーリャが攻撃を仕掛けてくる。
パウロは仕方ないとばかりに、剣を構えて迎えうった。

リーリャ
「確かにあんたのほうが、才能はあるのかもしれない……!
でも、私のほうが努力してる!」

パウロ
「ああ、ぐうの音も出ないな!
真夜中に修行?
俺は絶対そんなことしない!」

リーリャ
「ッ……嫌いよ!
あんたみたいな堕落した人間!」

リーリャの横薙ぎの一閃。
パウロは剣筋を見極めて、相手の剣を下から跳ね上げた。
彼女の手から剣が離れて地面に落ちる。

パウロ
「嫌いなんてショックだな。
俺は好きだぜ、リーリャのこと」

リーリャ
「ふざけないで!」

パウロ
「ふざけてるもんか。
リーリャの顔も身体もすごくそそる。
今すぐ手を出したいくらい、俺好みだし」

パウロ
「ああ、こうして俺が勝ったんだから何かしてもらおう。
そうだなぁ……今夜、リーリャの部屋に――」

レイダ
「その辺にしときな」

パウロ
「!!」

背後で聞こえた声に驚き、パウロは身体を反転させながら持っていた剣を振るう。
しかしそれは、あっさりと受け止められた。

レイダ
「オーガスタに聞いてたとおり、こりゃ確かに腕の立つ小童のようだね。
いい動きをしていたよ、だから……」

レイダ
「少し痛い目を見たほうがいい」

パウロ
「なっ!?」

視界の端で黄金色の剣が動いた。
咄嗟に剣で受け止めるが、あまりの重さに腕が痺れる。
それでもすぐ反撃に転じれば、レイダがニヤリと笑った。

レイダ
「この程度かい?」

パウロ
「!?」

何が起きたか理解する前に、パウロは地面に叩きつけられていた。

パウロ
(冗談だろ……遠くからは見えてたのに、近くで切り合うと剣筋がまったく見えなかった……)

なんとか身体を起こし、地面に膝をついたままレイダを見上げる。
余裕綽々といった顔で見下ろされ、パウロは唇を噛んだ。

レイダ
「あんたには才能がある。
だが、強さを求める渇望がないようだね」

レイダ
「そんな調子じゃ才能も腐っちまう。
そのうち誰にも勝てなくなるよ」

水神流の頂点。
水神レイダにきっぱり言い切られて、さすがのパウロも言葉を失くす。

パウロ
(俺が、誰にも勝てなくなる……?
何を言ってるんだ?)

パウロ
(俺が弱くなるって言ってるのか?
そんなわけないだろう)

レイダの言葉の真意がわからない。
パウロは顔を歪めてレイダを睨む。

レイダ
「あんたは明日から毎日、道場へ来な。
あたしが直々にその腐った性根を叩き直してやるさね」

レイダ
「オーガスタ!
こいつはあたしが預かるよ」

オーガスタ
「おれの秘蔵っ子なんだが……。
まぁ、水神様に言われちゃ逆らえないな。
揉んでやってくれ」

パウロ
「おい! 勝手に話を進めんなよ!」

パウロ本人をよそに勝手に話が進んでいく。
我慢できずに怒鳴り散らした。

パウロ
「水神流のヤツにとっての水神はたいそうなモンかもしれないけど、俺には関係ない!
ふざけたこと言うなよ!」

基本的に女性には礼を欠かさないパウロには珍しく、レイダに牙を剥く。年上の美人という良い印象は消え、今となっては憎々しい相手だ。

レイダ
「それだけ吠えられるなら遠慮はいらないね。
さっさと剣を構えて向かってきな」

パウロ
「………………」

レイダ
「あんたがあたしにかすり傷ひとつでも与えられたら、すぐにでも解放してやるさ」

パウロ
「かすり傷って……、さすがに俺を舐めすぎだろう?」

レイダ
「そっちこそあたしを舐めてるのかい?
あんたごときが、水神様にかすり傷を負わせられるって?
ハッ、馬鹿言ってんじゃないよ」

唇の端をつり上げてレイダが笑みを浮かべた。
彼女の表情にパウロの苛立ちが募る。

レイダ
「それでどうする?
尻尾を巻いて逃げだすのかい?」

レイダ
「もしそうなら、あんたにお似合いだね。
何せ負け犬の顔をしているんだから。
あんた、何かから逃げた経験あるだろう?」

レイダの言葉にパウロの頭に血が昇る。

パウロ
「うるさい!
俺は逃げてなんてない!」

カッとしたパウロは反射的に地面を蹴り、レイダに向かって飛びかかった。

数日後、パウロはこの時の浅はかな行動を、心の底から悔いることになる――。

オーガスタ
「おはよう、パウロ! 今日もいい朝だな!
さあ、道場へ行くぞ! ……ああ、お嬢さん、扉の修理代は後ほど持ってこさせるから悪しからず」

昨夜知り合ったばかりの女の家で朝を迎えると、オーガスタが扉を蹴破ってやって来た。
パウロは毛布の中で身体を丸める。

パウロ
「……行かない」

オーガスタ
「馬鹿なこと言うんじゃない。
レイダがおまえさんを待ってるんだぞ?」

オーガスタ
「おまえさんだってレイダに勝つつもりで斬りかかって行ったんじゃないのか?」

パウロ
「それは初日の話だ。
今はまったくそんな気はないから。
あんなバケモノの相手できるかよ……」

パウロ
(あの時は挑発されて頭に血が昇って、冷静な判断ができなかった)

パウロ
(かすり傷くらいならって思ったけど、今となったら、勝てる気がまったくしない……)

身体を丸めたまま、傍らの女の柔らかい裸体に抱きつく。

オーガスタ
「水神様に個人的に修行をつけてもらえるのが、どれだけ光栄なことか、わかっちゃいないようだな」

パウロ
「ああ、わかんないな。
俺はお前と違って水神流の剣士じゃないから」

オーガスタ
「……まだそんなこと言ってるのか。
おまえさんほどのセンスがあれば、もうすでに、水神流の技のいくつかは身についてんだろう?」

パウロ
「さーな」

オーガスタ
「まぁ、どんな返答でも構わん。
無理矢理にでも道場につれて行くからな!」

パウロ
「……わからない。
なんでそうやる気に満ち溢れてるんだ?」

パウロ
「毎日、朝から俺を探して連行して……。
そんなに俺がボコボコになるのを見たいって?」

オーガスタ
「皮肉を言ってくれるな。
レイダとの手合わせはおまえさんの糧となり、確実に剣士としての格が上がる」

オーガスタ
「そして、いつかおまえさんが――」

女A
「……ねぇ、なんでもいいから、そういう話はうちを出て行ってからにして。
毛布で隠れてるとはいえ、私、素っ裸なんだけど?」

パウロ
「……ごめん」

女が怒っている……当然だ。
睦言を交わし合った昨夜の情事がなかったかのように、パウロはオーガスタと共に部屋を追い出された。

そして、道場につれて来られたパウロが足を踏み入れると、すでに鍛錬を始めていた門下生たちから、白い目を向けられる。

パウロ
(レイダを呼びに行ってオーガスタがいない……。
こいつら、やることが明け透けだな)

リーリャの家の門下生
「パウロ!
水神様を待たせるとは無礼にもほどがあるぞ。
頭を下げてお詫びしろ!」

パウロ
「待たせるも何も、あいつは一日中、道場にいるんだ。
俺がいつ来ようが問題ないだろう?」

リーリャの家の門下生
「あ、あいつだと!?
不敬だ! 許されないことだぞ!」

門下生たちが同調してパウロを責め立てる。
彼らに嫌われていることは知っていた。

パウロに因縁のあるゴロツキが道場を荒らし、師範を敬わないどころか恥をかかせ、水神すら軽んじている。

パウロ
(俺より弱いくせに、いっちょ前に嫌悪感を向けて敵視してくる……)

パウロ
(ここんとこ毎日、そんなヤツらの前でレイダにボコボコにされて、嘲笑されてるんだ)

ストレスが溜まっているせいか、苛立ちやすくなっている。
それに加えて周囲に見下される状況は、パウロに実家にいた頃のことを思い出させた。

パウロ
(いっそレイダにやられる前に、こいつらをまとめてやっちまうか?)

物騒な考えに身を任せてしまおうと剣を握り直した時、後方がざわつき、その人は現れた。

レイダ
「あんたたち、何を遊んでるんだい?
道場に来て剣を振らずにどうする。
リーリャを見習いな」

レイダの示す先ではリーリャがひとり、一心に剣を振っている。

パウロ
(相変わらずバカ真面目だな)

パウロ
(あれが身につけばいいけど、今のとこそんな感じはなさそうだ)

オーガスタ
「水神様の言うとおりだ。
準備は終わっているんだろうな?
さっさと始めるぞ」

リーリャの家の門下生
「はい!」

パウロ
(ハンッ! 俺につっかかって来る時とは別人みたいに従順だな!)

パウロが内心で毒づいていると、レイダが近づいてくる。
すぐ傍まで来ても、足音は聞こえなかった。

レイダ
「今日はどれくらいもつだろうね?」

パウロ
「……チッ、知るかよ」

パウロ
「全部あんたのさじ加減じゃないか。
どうせ今日も途中まで手加減して、飽きた頃にぶちのめすんだろう?」

レイダ
「それが嫌なら強くなることさ。
弱いままで不平不満を言おうだなんて100年早い」

勝てる気はしないが、逃げられる気もしない。
追いつめられたパウロは、苛立ちをぶつけるようレイダに斬りかかった――。

パウロが目を開けると、そこはオーガスタに与えられた部屋の中だった。
窓の外は暗くなっている。

パウロ
「気絶してた、のか……ッ、いってぇ……」

首の裏が鈍く痛む。
背後に回ったレイダから首に一撃を入れられたのかと、パウロは自分が負けた状況を推測する。

パウロ
「ぜんぜん、覚えてない……」

意識をなくす前後のことは記憶にない。
首以外、腹や足にも痛みがあり、一瞬でボコボコにされたのだと悟った。

パウロ
「全力で向かっても、あっちにとってはお遊びってわけか……。
ハハッ、やってらんねー……」

乾いた笑みを浮かべた時、パウロの腹が空腹を訴えて鳴いた。
こんな気持ちでも腹は空くらしい。

パウロ
「……身体は正直だな」

パウロは食べ物を探してキッチンへ向かう。

パウロ
(あ?)

キッチンには先客がいた。
否、先客ではなく主と言うべきだろう。
彼女はワインを飲んでいた。

パウロ
(空き瓶があんなに……酔っ払ってるのか?)

フルート
「……なんの用かしら?」

パウロ
「なんの用っていうか、何か食べ物があったらもらおうかと思って」

フルート
「食事の時間はとっくに終わったわ。
貴方の分は残っていない。
全部あの女たちが食べてしまったもの」

パウロ
(あの女ねぇ……)

フルート
「オーガスタもリーリャも食べ終わったらすぐ、あの女と一緒に道場へ行ってしまったわ」

フルート
「彼女が来てから、うちはバラバラよ!
ふたりとも毎日毎日、剣術、剣術って……!
私との時間なんてどうでもいいみたいに……!」

両手を胸の前できつく握り、フルートは真っ赤な顔で不満を吐き出していく。

フルート
「……全部、貴方が来てからおかしくなったの!」

パウロ
「俺のせいにされてもな。
どっちかって言うと、オーガスタだろう?」

フルート
「やめて! 貴方があの人を悪く言わないで!」

パウロ
(自分が悪く言うのはアリだけど、他人に言われるのはナシってことか?)

フルート
「貴方は……疫病神よ」

フルート
「関わる人間をみんな不幸にする……」

パウロ
「!! 俺のことそんなに知らないくせに、好き放題言ってくれるな」

フルート
「わかるわ!
だって実際、私は不幸になってるもの!
この、疫病神!!」

パウロ
「っと!」

ワイングラスが飛んできた。
パウロは軽い足取りで避け、背後でグラスが割れる。

パウロ
「飲みすぎじゃないの?」

フルート
「うるさい!」

パウロ
「おー、こわ!」

フルートは目をつり上げて怒っていた。
今度は空き瓶でも投げられそうだ。
パウロはさっさと退散することにした。

パウロ
(家族のアレコレに巻き込まれるのは面倒だ。
……そろそろ潮時かもしれないな)

パウロ
(本格的に旅の資金を稼ぎ始めるか。
けどその前に、とりあえず今は……)

パウロ
「今晩のメシと宿を確保しないとな」

ひとまず家を出ようとしたパウロだが、ふと思い出したかのように足を止めた。

パウロ
「そういえば……俺の剣、どこだ?」

気絶して運ばれた部屋にはなかった。
道場に置き去りにされたのだろうか?

パウロ
(今はレイダたちがいる。
道場には行けないか……)

パウロ
(ま、明日でもいいや)

武器を持たずに夜の町へ繰り出したパウロだが、大きな問題もなく朝を迎えることができた。

太陽が高く昇った頃。
パウロは女の家から直接道場に足を運んだ。
レイダとオーガスタは不在らしい。

パウロ
(ん? リーリャもいないのか。
あの真面目ちゃんがいないなんて珍しい)

門下生たちが修行をする傍ら、パウロは剣を探してまわっていたのだが……。

パウロ
(おっかしいな……。
道場のどこにもないぞ?)

パウロ
(ここじゃないのか?
オーガスタが預かってたりして……)

リーリャの家の門下生
「おい、パウロ。
何も持たずに道場に来るなんて、いったいどういうつもりだ?」

パウロ
「お前には関係ない。放っておいてくれ」

門下生に声をかけられて、パウロは露骨に嫌そうな顔をする。

リーリャの家の門下生
「放っておけるはずないだろ?」

パウロ
「?」

リーリャの家の門下生
「剣術道場に剣を持たず来るなんて、非常識にもほどがある! それともまさか、素手で剣を相手に修行するつもりなのか?」

リーリャの家の門下生
「だとしたならば、この私が協力しよう!
何せ……兄弟子だからなッ!」

青年が突然に剣を振るってきた。
パウロは不意打ちの一撃を避けて距離を取る。

周囲を見わたせば、他の門下生たちがにやけながらパウロを囲んでいた。

パウロ
「……そういうことか」

パウロ
「俺の剣はどこだ?
お前らが隠したんだろう?」

リーリャの家の門下生
「知らないな!
適当なことを言うんじゃない!」

一閃、二閃、三閃……次々と攻撃を仕掛けられる。
剣がなくても避けるだけなら簡単だ。
だが、反撃ができない。

パウロ
「武器を持たない相手に剣を向けるなんて!
名門道場の門下生が聞いて呆れるな!」

リーリャの家の門下生
「なんとでも言え!
ここにお前をかばってくれる師範はいない!
今日こそ叩き斬ってやる! 疫病神!」

パウロ
「!!」

パウロ
(疫病神って言ったか?)

パウロ
(まさか、こいつらが調子に乗ってるのは、バックに師範の妻がいるからとか……?)

そうでなければ名門道場に通う剣士が、相手の武器を隠した上で襲いかかるなんてマネを堂々とできるはずがない。

パウロは舌打ちをして拳を握る。

パウロ
「……上等だ! お前らまとめてやってやる!」

思い出すのは、ラッドの戦い方だ。
周囲にある物をなんでも使っての戦い――。

パウロ
(まずはひとり倒す!
そいつから剣を奪って反撃だ!)

徒手空拳を身につけているわけではないが、パウロは素手で門下生たちに向かって行く。

攻撃を受け止めることができない分、軽やかな動きで避け、急所を狙って拳を振りぬいた。
やがて――。

パウロ
「………………」

立っていたのは、パウロだけだった。

門下生たちは血まみれで倒れている。
パウロはそのうちのひとりの胸ぐらを掴んだ。

パウロ
「はぁ、はぁ……俺の勝ちだ。
剣をどこにやった?」

リーリャの家の門下生
「……ッ……ぅ……」

パウロ
「ボコボコにされて話せないってか?
ずいぶんと情けない姿だな!」

パウロ
「人の剣を隠すような姑息なマネしてやられたヤツらには、お似合いの姿かもな!!」

門下生から手を離して床に投げ、パウロは道場を出ようと扉を開けた。

リーリャ
「!!」

パウロ
「お前か……チッ、そこ退け!」

リーリャを押しのけて外に出ると、パウロはそのまま道場に背を向けて歩き出す。
そのまま道場はもちろん、家にすら帰らなかった。

旅の資金を貯めながら女の子と遊ぶ毎日。
気づけば10日が経過していた――。

オーガスタ
「見つけたぞ!」

パウロ
「オーガスタ?」

ひと仕事終えて今日の夕食の店を探していると、パウロの前にオーガスタが現れた。

パウロ
「……よく俺の居場所がわかったな。
町こそ出てないが、けっこうあちこち移動してたんだけど」

オーガスタ
「おまえさんはずいぶんと暴れてるようだからな。
ゴロツキ共にあたってみたら、こうして居場所がわかったってカラクリさ」

オーガスタ
「休みは満喫しただろ?
そろそろ道場に戻って来い」

パウロ
「冗談じゃないな。
俺はもう戻るつもりはない。
金が貯まったら旅に出る」

オーガスタ
「……門下生たちがしたことは聞いた。
リーリャが一部始終を見ていたらしくてな……。
おまえさんの剣はリーリャが見つけて持ってる」

オーガスタ
「あいつらには厳しく指導しておいたから、もう二度とこんなことは起こらない。
だから、このまま残ってくれないか?」

オーガスタの言葉にパウロは眉を寄せる。
不快感もあったが、何よりも解せないのだ。

パウロ
「ずっと疑問だった。
なんでそこまで俺にこだわる?」

パウロ
(まさか俺の素性を知ってる?
ノトス・グレイラットの名前が欲しいとか?)

オーガスタ
「……おれとフルートは結婚こそ早かったが、なかなか子供ができなかった。
リーリャは歳を取ってからできた子供でな……」

パウロ
「? 急になんの話だ?」

オーガスタ
「うちは名門と云われているが残念ながら跡取りがいない。
リーリャも頑張ってはいるが、道場の看板を背負うには実力が足りないのが現状だ」

オーガスタ
「いずれリーリャに婿をとらせて道場を継がせるつもりでいた。そのための条件は、リーリャよりも腕の立つ者であること……」

パウロ
「もしかして……俺に、リーリャと結婚しろって言ってるのか?」

オーガスタ
「おまえさんには才能がある!
でもそれだけじゃない!」

オーガスタ
「パウロの剣は人の目を惹きつける!
今でもそうだ! これから先も腕を磨き続ければ、ますますおまえさんの剣技は輝きを増すだろう!」

オーガスタ
「それこそ……水神の黄金色の輝きすら霞むほどに!」

オーガスタはパウロに夢を見ていた。
それが父親としてなのか、剣士としてなのかはわからない。

パウロはそのことに気づき、オーガスタが自分にこだわる理由がわかった。

パウロ
「つき合いきれないな」

オーガスタ
「まだまだ、おまえさんに教えることがある。
道場に戻って来い!」

パウロ
「……いいや、ないよ。
お前に教わることはもうない」

パウロは剣を構える。
ゴロツキから巻き上げた安物だ。

オーガスタ
「口で言って聞くような奴じゃないか……。
ハハッ、いいだろう。
いつものように力ずくでつれ帰る!」

先手必勝。
そのスタイルは変わらない。
パウロはオーガスタに向かっていく。

剣を一閃すれば簡単に避けられ、カウンターが飛んできた。

パウロ
(大丈夫、どんな話を聞いたあとでも、俺は冷静でいられてる)

パウロ
(太刀筋だってよく見える。
負ける相手じゃない!)

折檻とも思えるレイダとの個人特訓は、本人が意図しないうちに糧になっていた。

以前は拮抗していた戦績の相手など、敵ではない。

オーガスタ
「!?」

オーガスタのカウンターに合わせて、剣を振りぬく。
剣速はパウロが勝っていた。

時間にして十数秒。
パウロはオーガスタの剣を弾き、喉元に切っ先をつきつけた。

パウロ
「戦績が並ぶのはこれで最後だ」

オーガスタ
「まさか……短期間でここまでの力を身につけていたなんてな……。
ハハッ、実力の差がここまで広がっていたとは……」

パウロ
「もう力ずくで道場につれて行かれることはない。
自分から行くことも絶対にないから、俺たちの関係はここまでだ」

つきつけていた剣を下ろす。
その瞬間、背筋がゾワゾワと粟立った。

レイダ
「だったらあたしがつれて行こうかね」

パウロ
「ッ!」

パウロ
(斬られる……!)

反射的に振り向きざまに剣を振るうと、黄金色の剣とぶつかった。
と、同時に音を立ててパウロの剣が折れる。

レイダ
「安物の剣を使うからだ。
敵の前で武器を失うなんて二流もいいとこさね」

パウロ
「ッ……クソッ!」

レイダ
「明日からまた修行をつけてやる。
ありがたく思うことだね」

パウロ
(明日から、また……ボコボコにされて、そんな姿を卑怯なザコに嗤われるのか……?)

絶対にイヤだと唇を噛むが、武器がない上に水神がいる状況では逃げられない。

無情にもパウロはオーガスタの家につれ戻されたのだった。
だが、それで諦めるパウロではない。
その夜――。

パウロ
(みんなもう寝たか?)

パウロ
(出て行くなら、今しかない)

パウロ
(まずは剣を取り戻さないと……。
確かリーリャが持ってるんだよな?)

パウロは足音を立てないように、気配を消してリーリャの部屋に忍び込んだ。

彼女の性格か部屋は整理整頓されており、剣はすぐに見つかった。
リーリャはベッドで寝息を立てている。

パウロ
(俺とリーリャが結婚ね……)

パウロ
(……黙ってれば、けっこう好きな顔と身体なんだけどな)

リーリャ
「……ん、んー……」

リーリャの吐息が漏れる。
パウロは薄く色づいた唇から目が離せなかった。

衣食住を提供してもらうということもあり、最近は年上の女性ばかりと遊んでいた。

好みの外見の、同年代の女の子が眠る姿はとても官能的でたまらない。
パウロはリーリャに馬乗りになった。

パウロ
「……この家に来て、俺のほうこそ散々な目に遭ったんだ……。
最後にこれくらい――」

彼女の首筋に顔をうずめながら、成長途中のふくらみに触れていると――。

リーリャ
「……んっ……ん……?」

リーリャ
「……え……え、あ……?
パウロ……?」

パウロ
「ああ、ごめんごめん。
起こしたか」

リーリャ
「っ、な、何してるの?
ど、どいてよ……! 大声出すわ――」

全てを言い終える前に彼女の口を手でふさぐ。
空いたほうの手でリーリャの腕を掴み、頭の上で押さえつけた。

パウロ
「今後のために教えておいてやるけど、大声出さなきゃいけない状況で、
いちいち大声出す宣言するもんじゃないぞ」

リーリャ
「!! んーっ! んーっ!」

パウロ
「……俺さ、面倒なことって嫌いなんだ。
だけど、けっこう我慢してただろう?」

パウロ
「ムリヤリ道場につれて来られて、朝からずっと稽古に参加させられて、弱いくせにプライドだけはあるヤツらの相手して……」

パウロ
「旦那に近づく女の八つ当たりも甘んじて受けたりして、強すぎる相手にボコられるのに耐えて……」

思い出すだけで腹が立つ。
パウロは苛立ったままリーリャを見下ろした。

パウロ
「もう充分だろう? 俺はここを出て行く」

パウロ
「だけどその前に、苛立ちは全部発散していこうと思うんだ」

これから何をされるのかわかったのだろう。
リーリャが身体をばたつかせて抵抗しようとするが……。

パウロ
「力じゃ敵わないって」

リーリャ
「っ!!」

パウロ
「まぁ、お互いに楽しもうぜ。
俺、けっこう上手いらしいからさ」

これまでに溜まっていた鬱憤を晴らすかのように、その晩、パウロはリーリャの純潔を散らした。
それから数時間後――。

夜明け前――。
ふと目が覚めたパウロは隣で眠るリーリャを見て、昨晩の自分の行動を思い返し、冷や汗をかいた。

パウロ
(やっちまった……)

パウロ
(……途中からはリーリャも求めてきたし、同意の上だったってことに……なるわけないか!)

リーリャに手を出したことがバレれば、間違いなくフルートがぶちギレるだろう。

パウロ
(さすがのオーガスも怒るよな……それか、責任取って結婚しろって迫られたり……?)

パウロ
「さっさと逃げよう」

考えるまでもなく答えはあっさり出た。
元々出て行くつもりだったのだ。
脱ぎ散らかした服を着て、剣を回収する。

夜明け前の澄んだ空気の中、パウロはそそくさと敷地から出ようとするが――。

レイダ
「やっぱり逃げ出そうとしたね」

パウロの行く手に水神が立ちはだかった。

パウロ
「……まさか、ひと晩中、外に?」

レイダ
「なわけあるかい。
あんたの気配がしたから来たのさ」

レイダ
「あそこまで露骨に気配を隠せないなんて、何か動揺することでもあったのかい?」

パウロ
「! いいや、べつに。
そんなことないけど、うん、これっぽっちも!」

レイダ
「……そうかい。
まぁ、なんにしても止めさせてもらうよ」

レイダ
「オーガスタには恩があるからね。
跡取りとして育てたいやつだっていうなら、逃がしゃしないよ」

パウロ
「あんたに話してたのか……。
だから俺をボコボコにしてまで鍛えて……」

レイダ
「ハッ、馬鹿言うんじゃないよ。
単純にあんたが生意気だから叩きのめしたのさ。
今回もそうさせてもらうよ」

パウロ
「捕まって、たまるか!」

今日も勝てる気はまったくしなかった。
それでも出て行くためには、目の前の高すぎる壁を突破するしかない。

パウロは地面の土を蹴り上げた。
砂粒がレイダに飛んでいくが簡単に防がれる。

レイダ
「ハッ、情けないね。
この程度の小細工でどうこうできるとでも――」

パウロ
「やぁああ……ッ!」

パウロが向かって行く。
レイダの身体がかすかにブレた。

パウロ
(ここ、だ……!)

もう何度も水神の動きを見ている。
もう何度も水神と剣を交わしている。

勝てる気はしない。
だが攻撃という選択肢を捨て、回避と逃走だけに集中すれば――。

レイダ
「!!」

パウロは寸でのところでレイダの剣をかわし、そのまま傍らを駆け抜けた。

パウロ
「服切れてるし……! おっかねぇ!!」

背後から斬りかかってくる気配も、追いかけてくる気配もない。
パウロは振り返ることなく走り去って行く。

レイダ
「全力でなかったとはいえ、避けた……?」

レイダ
「……あのガキ、なかなか恐ろしい剣士になるかもしれないね」

聞く人が聞けば、感動で涙してしまうであろう、水神レイダの言葉は、必死に逃げるパウロの耳には届かなかった――。



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